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秋田地方裁判所 昭和25年(行)64号 判決

原告 杉本治助 外三十五名

被告 秋田県農地委員会

一、主  文

原告等の請求は、これを棄却する。

訴訟費用は、原告等の連帯負担とする。

二、事  実

一、請求の趣旨並びに原因

原告等訴訟代理人は、請求の趣旨として「被告が別紙目録記載の土地について昭和二十五年六月八日農地訴願第三二九号五里合村農地委員会の買収計画承認の裁決は、これを取り消す。

右土地を前記買収計画より除外しなければならない。

訴訟費用は、被告の負担とする。」旨の判決を求め、その請求の原因として左のとおり述べた。

(一)  別紙目録記載の土地二筆は、原告等三十六名及び別紙訴外人名表記載三十一名合計六十七名の共有地であるのに、五里合村農地委員会は、昭和二十五年二月三日所有者杉本常助、売渡人杉本栄吉として買収計画を樹てたので、原告等は異議申立をしたが却下され、被告秋田県農地委員会に訴願したが、同委員会も亦昭和二十五年六月八日右土地は自作農創設特別措置法第三条所定の法人その他の団体の所有する小作地に該当するとなし、右訴願却下の裁決をなし、該裁決書は同年八月十七日原告等に送達された。

(二)  然るに、右土地は前記のとおり原告及び訴外人等六拾七名個人の共有地であつて部落有地ではない。同裁決書の理由中に売渡人として表示されてある杉本栄吉は共有者の一人であつて、只共有者を代表して耕作しているに過ぎないので、もとより小作人ではない。

(三)  被告は、本件土地を自作農創設特別措置法第三条第五項第四号所定の法人その他の団体の所有する小作地に該当するとして原告等の訴願却下の裁決をしているが、その他の団体というのは一定の目的を有する社団又は財団を指称し、法人に類する団体即ち、或る事業の達成を目的として組織された団体であつて土地の共有に過ぎない場合は、たとえ数百名の共有地であつても、右の規定を適用して買収計画を樹立するのは違法である。

(四)  よつて、右土地に対し、五里合村農地委員会の農地買収計画承認の決定をなした被告の裁決は違法であるから原告等は他の共有者との関係では保存行為として請求の趣旨どおりの判決を求める次第である。

二、被告の答弁

被告訴訟代理人は、「主文第一項同旨並びに訴訟費用は原告等の負担とする」旨の判決を求め、答弁として左のとおり陳述した。

(一)  本件土地に対し、原告等主張のように五里合村農地委員会が買収計画を樹立し、これに対し原告等が異議申立をしたが却下され、被告に訴願したが訴願もまた棄却されたことは認める。しかし、本件土地が原告等六十七名の共有地であることは不知、その余の事実は否認する。

(二)  そもそも本件土地は、その登記名義は訴外杉本常助となつているがそれは右杉本は石神郷という団体の代表者としての土地管理上の形式であつて、実質的所有者は右石神郷という団体である。右団体とは、石神部落の世帯主多数の共有で、その収益を部落運営の財源とする趣旨での団体である。尤も新民法施行後においては長子相続でなくなつたから世帯主以外の者も共有者たり得る権利を有するにいたつた。

(三)  訴外杉本栄吉は、本件土地の小作人である。もともと本件土地は、当初部落全員が耕作利用していたが、その後小分散耕作をさけ、維持管理の一元性を期する必要から特定個人に対する耕作を認めたものであり、且つ、小作料を徴収して来つたものである。而して右栄吉は、右石神部落の総意によつて十八年以上も現実に耕作している正当な小作人である。

(四)  よつて、本件土地は、自作農創設特別措置法第三条第五項第四号にいう「その他の団体」の所有する小作地であるから被告の前記訴願裁決は何等違法ではない。(立証省略)

三、理  由

本件土地に対して、原告等主張のように五里合村農地委員会が買収計画を樹立し、これに対し原告等が異議申立をしたが却下され、そこで被告に訴願したが訴願もまた棄却されたことは、当事者間に争がない。

本件主要の争点は、本件土地は自作農創設特別措置法第三条第五項第四号にいう「法人その他の団体」の所有する小作地であるか否かに存するので、しらべるに成立に争のない甲第一乃至第六号証同七号証の一、二同第八乃至第十一号証証人杉本栄吉並びに原告本人杉本治助尋問の結果によれば、秋田県南秋田郡五里合村神谷という部落の石神、上石、下石、銭神沢、長者森の五つの小字部落に住んでいる世帯主が石神郷と称する一つの郷をなし、本件土地は右石神郷在住世帯主全員(現在六十七名)の財産であつて、若し、その世帯主が他村に転居すれば、その者の権利は自然消滅し、反対に他村からその部落に転入して来たときは、一定の手続を経てその権利を取得したこと、本件土地の所有名義は、便宜上、明治九年訴外杉本三太郎をその代表として土地台帳に記載し、次いで、明治二十九年十一月三十日訴外杉本常助が家督相続したため本件土地の所有名義が右常助になり現在に至つていること、本件土地を訴外杉本栄吉が昭和十年頃から小作し、小作料は右石神郷代表杉本常助に納入し、昭和二十一年から右石神郷の会計係に真壁良治に納入今日に至つていること、かくして納入された収益は右石神郷部落の事業(部落内の橋の修繕費、祭典費、神社仏閣の営繕費、その他)等に支出されてきたことを認めることができる。右認定に反する原告本人杉本治助尋問の結果は信用しない。

しからば、本件土地は右石神郷に在住する全世帯員(現在六十七名)の総意によつて訴外杉本栄吉の小作して来た土地であり、かゝる総有の形態は、自作農創設特別措置法第三条第五項第四号にいう「その他の団体」の所有する農地と認定するのが相当である。従つて、右農地の耕作者で小作人である訴外杉本栄吉を売渡の相手方とした訴外五里合村農地委員会の農地買収計画は適法であつて、被告の原告等の訴願を却下した本件裁決は相当であるから、原告の本訴請求は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担については、民事訴訟法第八十九条九十三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 百武一 安田忠治 阿部哲太郎)

(目録省略)

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